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ダンシングアンダーサークル④

 公園に向かう途中、岸本が僕に話しかけてきた。
「おめでとうございます」
「早い気しかしないけど」
「まだ2ヶ月あるし、北浜さんがキッチリ教えてあげれば大丈夫です。琳ちゃん、飲み込みいいですしね」
「最近やっとコードで『レット・イット・ビー』が弾けるようになったくらいだぜ?」
「十分じゃないですか?お姉ちゃんもスキルは経験を積んで磨くものだってよく言ってますよ。それに目先に目標があるなら上達も早いですよ。きっと」
「んー」と僕は唸った。
 
 岸本茜は少し変わった女の子だった。部長である姉を追いかけて同じ大学に入り、同じこのサークルに入部してきた。姉とは3つ違いの為、中学、高校を一緒に通えなかった悔しい気持ちをバネに猛勉強し、ストレートで姉と同じ念願であったこの大学に受かった、ということらしい。これについては周囲の誰もが驚いたそうだ。もちろん学力の伸びもさることながら、どちらかと言えばその執念について。住まいですら姉と同じで衣食住を共にしている。入部してきた時の挨拶では「姉が立ち上げたこのサークルは、私がいずれ引き継ぎますので」と控えめな口調で露骨に宣言した。部長はその様子を退屈そうに端から眺めていた。ベースを弾き始めたのは部長がドラムを叩くからで、姉に認められようと鍛練された彼女のベーステクニックはサークル内の誰よりもタイトで独創的であり、この姉妹のリズム隊は鉄壁だった。その妹のベースを代理で務めることに同意した部長の判断から、僕も少なからず信用を得てきているのかも知れないと思った。
 男勝りな姉とは対照的に岸本茜は礼儀正しくて言葉遣いも(少し独特ではあるけれど)丁寧な、カフェで読書や公園で犬の散歩が絵になる淡い色の印象を持つ女の子だ。普段の様子から彼女が激しくベースを弾く印象は微塵もなく、姉を追い求めた結果、それは彼女の異質な特技としてステータスに追加されていた。いかにも妹といった感じで、髪型はフランス人形のようなボブで内向きにカールがかかっていて、服の色目はネオンカラーよりもパステルカラーを好んで着ることが多く、彼女の容姿や醸し出される淡い雰囲気により、そういった方面を好む男性からは相当モテた(おそらく関わらない限りは近寄りがたい雰囲気の琳よりも)。告白される度、相手を選んで付き合いはしたが長続きしないようで僕の知っている限り、彼女は入学してからすでに2人の年上の男性と付き合い、そして別れていた。現在、恋人はいない(と思う)。
「これで良かったんですよ。ほら見てください。琳ちゃん、すごく嬉しそう。良いことしたなーわたし」と岸本は嬉しそうに言った。
 琳は前の方で数名に取り囲まれて祝われたり、からかわれたりしながら終止笑顔で歩いていた。サークルの活動中、琳とはなるべく距離を置くようにしている。呼び名も今だけは北浜と藤川だ。
「ほんと美人ですよね。琳ちゃん」
岸本はため息をつくように呟いた。
「北浜さんと付き合ってるとか、言ったとしても誰も信じないでしょうね。たぶん」
「俺とは釣り合ってない」と言いたげな岸本の言葉を僕は代弁した。
「あ、すみません。そんなつもりじゃなかったんですけど」
「いいよ。俺もそう思ってるし」
「でも、いい線いってますよ。北浜さんも」
「ありがとう。泣けてくるよ」
「本当ですって。わたしの学部で北浜さん紹介してほしいって言ってきた子、前にいましたもん。お断りしておきましたけど」
「どんな子?」
「普通にいい子です」
「へえ」
「まあ、容姿は琳ちゃんには敵いませんけど」
「それはいいとして、今、聞き逃しかけたけど何で勝手に断っちゃうの?」
「だって琳ちゃんいるじゃないですかぁ。わるーい。あ、やっぱり本当は付き合ってないとか?」
「信じる者と小さな金魚はすくわれる」
そう言うと彼女は少し笑った。
「何ですかそれ。冗談ですよ。あれ見たら信じないわけにはいきませんから」
そう言ってから、しまったという顔をして岸本は黙った。墓穴とはこの事だ。そう、あの日のその出来事なんて、後に起こったことに比べれば大したことでも何でもないのだから。
 サークルで僕らの交際を唯一知っている人物、それが岸本茜だった。彼女らが入部してきた時の歓迎会でカクテルを飲んで酔いつぶれた琳が、二次会のカラオケボックスの誰もいない扉の開いた個室の奥で僕に抱きついているのを、偶然通りかかった岸本が目撃した。問題はここからだ。
「あっ」と岸本が言った瞬間、琳は僕から身体を離して彼女を個室へ引き込み、扉を閉めて電気を消した。そして、後退りしていく彼女にゆらりと近づいていって、こう言った。
「茜ちゃん、だったっけ?部長の妹さんの」
「はい。そうですけど」と岸本が言うと、琳はいきなり彼女に抱きついた。それはうなじと腰に手を回して全身を密着させたような抱擁だった。
「りん?」
名前を呼んだ僕の声は、全く届いていない。
「ちょ、ちょ待ってください」と戸惑う岸本のスカートを、琳はうなじに回していた左手で少し持ち上げ、その中にある彼女の股に片方の太ももを宛がった。後ろには壁があり、これ以上後退りが出来ない岸本は懸命に腰を引きながら内股にして侵入を拒もうとしたが、琳はつま先立ちした太ももをさらに強く彼女の股に押し付けた。
「やめてください」と今にも泣きそうなか細い声で訴える彼女の耳元で囁くように琳は言った。
「さっきの黙っててね。わたしはいいけど、そうすけが何か困るみたいだから」
「はい。誰にも言いません。だから」と言いながら、僕から見える岸本の顔はだんだん赤くなっていく。耳はすでに真っ赤だ。
「お姉ちゃんにも秘密にできるかな?」
「はい。約束します」
「ありがとう。仲良くしてね」
 そう言ってから琳は彼女の頬にキスをした。岸本は「えっ」と言って、正面を向いたまま硬直している。何が起きているのか理解できていないといった様子で、それは僕もまた同じだった。
「ちょっと、何してんの?」
 琳の後ろ姿に向けて言ったつもりのその言葉は、やはり今回も届いていない。それは、そのような言葉に繋がるよう口と喉を動かしただけのただの独り言に過ぎなかった。声を発しない岸本の横顔をしばらく見ていた琳は、岸本が琳の方に顔を向けようとした瞬間、もう一度キスをした。そして何を思ったのか、琳はその後も岸本の頬にキスを続けた。それは途中で数えるのを諦めるほどの回数に及んだ。やがて岸本の目は虚ろになり、半開きの口からは声が漏れ、発汗の様子からも彼女が性的に高揚していることが見てとれた。抵抗するために内股にしていた両足は、今ではだらりと開かれている。いつの間にか岸本はスカートを儚げに、規則的にひらひらと揺らしていた。琳の顔はこちらからは見えない。
 どうやら岸本は僕が目の前にいることをすっかり忘れているようだった。そのような快楽に身を委ねた女性の顔はセックスの時でさえ、僕は見たことがなかったし、彼女も恋人以外には見せたことはなかっただろう。あまりの光景に混乱し、僕は彼女たちを止めることができないでいた。いや、違う。その光景を見て、僕は激しく興奮していたのだ。
 やがて岸本はさっきまで下に垂らしていた両腕を琳の腰に回し、その振り幅を大きくした。息づかいは荒く、目は固く閉じている。琳はキスをやめ、包み込むように岸本の肩に両腕を回し、彼女の行為を受け入れた。
 次第に岸本の声色は変わっていき、最後は呻きのような低い声を上げ、両足を激しく痙攣させながら、琳にしがみついた。後頭部を岸本の片手に捕まれ、乱暴に引き寄せられた琳のストレートの黒髪はそれによりひどく乱れた。岸本の頬には、一筋の涙がつたった。
「ごめんなさい」と何度も謝る岸本の頭を彼女の呼吸が整うまで、琳はずっと優しく撫でていた。落ち着いた頃「かわいいね」と琳は呟き、彼女の涙の跡が残る頬に最後のキスをした。「大丈夫。誰にも言わないから安心して」琳はそう言って、ゆっくりと身体をほどいた。岸本は壁にもたれかかり、虚空を見つめている。その様子を暫く眺めてから、ようやく琳はこちらを振り返った。数日振りに顔を見たような、そんな気分だった。その琳の顔には表情というものは無かったが、唇は僅かに横に結んでいて、岸本の股に宛がわれていた太ももの一部は赤く染まっていた。茫然と立ち竦む僕に「じゃあ、わたし茜ちゃんと部屋戻るから。後で来て」と言って、僕の返事を待たずして入部挨拶の時とは別人に懐柔された岸本の手を握り、琳は行ってしまった。僕は暫くの間、その場から動けなかった。
 
「あ、誰にも言ってませんよ」
回想に耽る僕に対し、黙り込んでいた岸本は付け加えるようにそう言った。
「ありがとう。これからも頼むよ」
「もちろんです。わたしだって誰にも知られたくないですし」
「だろうね」と僕は同意した。
「それに琳ちゃんにだけ(・・)は嫌われたくないですからね」
「だけって何?」
「だって、なんか怖くないですか?琳ちゃんて」
「怖い?琳が?」
「はい。ちょっと」
「何かされたの?」
僕はあの日のことを棚にあげて言った。あれはみんなひどく酔っぱらっていただけだ。誰も悪くない。たぶん。
「いえ。そんなんじゃないですけど」
「じゃあ何?」
「なんか、うまく言えないんですけど底が知れないというか」と慎重に言葉を選んで話す彼女に対し、「どうかな?ぴたぴたの浅瀬にいる感じしか俺にはしないけど」と前方ではしゃぐ琳を見ながら否定的な意見を僕は述べた。
「それ、絶対、違いますよ」と岸本はこちらを向きながら真剣な眼差しでそう言い、深呼吸した後に続けた。
「今日、これ終わってから少し話せますか?」
「この後?夕方からバイトだけど、その前ならちょっとだけいけると思う」
「じゃあ、終わったらさっきの店にまた来てください。先に行って待ってますから」
そう言って岸本は歩幅を狭めて後退した。今、僕に話すことはもう何もないという風に。琳は前方でへらへらと笑いながらホルンの女の子と脇腹をつついてじゃれ合っている。彼女が身体を揺らす度、鞄に入れてあるトライアングルが隣接するビーターに接触し、不規則に鈍く鳴った。その音を聴いて思い出したようにポケットから携帯を取り出し、画面を見た。8時過ぎ。アキトへのラインに既読はまだついていない。琳がこの前、ファミレスで言った冗談を僕は思い出した。
午前8時。そう、全国の大学生はまだ眠っているのだ。
 
 午前9時。その公園は平日ということもあり、散歩をする老夫婦やジョギングをする数名程度の人、後は餌を待つ狡猾(且つ空腹げ)な鳩くらいしか見かけることはなかった。部長が指定し、辿り着いたいつものその広場からは、街路樹の向こうに大きな噴水と何かの博物館らしき建造物、後ろには小さな池と売店が見える。僕は岸本からベースを、岸本は琳からトライアングルを、そして琳は僕からギターを受け取った。サークルのメンバーは各々楽器の準備に取り掛かっていた。
「ありがとう」と琳は僕と目を合わせずギターを手に取った。それはまだ怒っているというより、照れによるものであるようだった。
「久しぶりのジョンソン」と琳は呟いた。
僕のアコースティックギターはいつからか、琳にそう呼ばれていた。ちなみに彼女のギターはジョージというらしい。
「まずはおめでとう。こうなったらやるしかないね」と僕が言うと、琳は「うん」とだけ返事した。
「木島さんにお礼言った?」
「さっき言ってきたよ」
「木島さん、なんて?」
「藤川たちなら大丈夫、だって」
「藤川たち?そう言ったの?」
「うん。もしかしてバレちゃってる?」
「まさか」と言って横にいた岸本の方を見ると、彼女は大きな目をさらに見開き、無言で大きく首をぶるぶると左右に振った。目を見開いた岸本のその顔は、ついさっき喫茶店で部長が見せたあの顔によく似ていた。雰囲気は違えど姉妹なんだなと僕は妙に納得した。次に木島さんの方を見た。彼はサックスにマウスピースを寡黙に取り付けている最中だった。僕らの視線に気付いていないのか見て見ぬ振りなのかその判断はこの場からはつきそうにない。
 その日の公園練習は僕ら以外でも若干の編成があったこともあり、終始緩い雰囲気で行われた。僕らは部長の指示の下、探るように音を出して曲を合わせたり合わせなかったりした。部長はドラム、ではもちろんなく、スタジオ以外の場所にいつも持参するカホンで僕らを先導した。琳は少し離れたところで携帯の画面を見ながら寡黙に練習していた。今はそっとしておこう。岸本はというと、トライアングルを片手に度々僕のところにやってきて「北浜さん、さっきのとこですけど、運指の効率悪いです。それじゃもたつきますよ」とか「見た感じ、セーハが足りてませんよね」など、指摘をしてはベースを取り上げ、目の前で披露してみせた。
「どうですか?」
「ぐうの音も出ないね」と僕は言った。

「おっしゃ!じゃあ1時まで休憩!」
正午を知らせるチャイムがどこかしらで鳴った後、部長はバチンとカホンを叩いてからそう叫んだ。岸本は「じゃあ、ここに置いておきますから」とベースを近くの木に立て掛けた。僕は返事をした後、ポケットから携帯を取り出し、画面を見ながら後ろに見えていた売店に向かって歩き出した。どうやらアキトからの返事はまだ来ていない。今朝、電車の中で見た若者と同じようにアキトは今の時間、まだ昨日の中にいて今日の始まりを迎えていないのかも知れない。まるで翌日の一部を前借りするかのように。そんなとりとめのないことを考えながら歩いていると、目的の売店はすぐ目の前に現れた。
 メロンパンとパックの牛乳を買って少し離れた木陰に座りながら周りを見渡すと、当然のように人も鳩も増えていた。売店横の小さな池では小学生が水辺の生き物と戯れ、その近くのベンチには部長を含むサークルの先輩たちが集まっていた。琳や岸本の姿がそこにないのは、さっきの広場にいるからだ。昼食を持参した者が楽器の見張りをするのがこのサークルの倣わしだった。「それ、絶対、違いますよ」と言った岸本の言葉と真剣な眼差しを思い出した僕は、携帯でthe united states of americaが演奏する『video killed the redio star』を流し、目の前に広がる景色を眺め、軽快なギターワークの中、乾いたメロンパンを牛乳で流し込んでいった。
 ゴミを捨てようと売店に立ち寄ると、遠目で見たとおり、部長が小学生たちと一緒になって何かを取り囲んでいた。足の隙間からは青い物体が見える。どうやらバケツのようだ。
「なんだこいつ!気持ちわりっ!」とバケツの中に捕らえた生き物たちを眺め、小学生たちはひどく興奮していた。
「なあ、姉ちゃん、こいつらなに?」と訊ねられた部長は僕を見つけるや否や「お、北浜。出番だぞ」とその質問をそのままこちらに投げてきた。「どれどれ」と言いながら座り込んでバケツを覗き込むと、そこにはメダカと見たことのない生き物が2匹泳いでいた。期待しながらこちらを見てくる小学生に僕は教えてやった。
「こいつらは、メダカの、お友達だ」
 僕がそう言うと「っだよそれっ!」と小学生たちは仰け反り返った。それを見て部長は「お前、ないわー」と蔑んだ視線を僕に向けた。
「上のがタイコウチで、下が蛇トンボの幼虫だよ」
僕の後ろで誰かが言った。振り返るとそこには木島さんがいた。
「トンボ?何で池の中にトンボがいんの!」と小学生のひとりがバケツに叫んだ。
「蛇トンボは成虫になれば羽根が生えてくるんだ。今はこうやって池の中にいるけどね。身体が細長くてニョロニョロしていて蛇みたいだろ?だからそう呼ばれているんだよ」
「マジで?こいつ羽根生えてくんの!」と小学生たちは激しく興奮し、バケツに顔を近づけた。タイコウチは水面に顔を出しながら前足でパタパタと泳ぎ、蛇トンボの幼虫はその下で長い身体を揺らしながらゆらゆらと泳いでいた。メダカはというと、バケツの外壁に沿ってせっかちに泳いでいる。
「なんかこいつ、余裕だな」と部長はバケツの中に向かって言った。蛇トンボの幼虫のことだ。
「そうですね。この中では彼が一番強いはずですから」と木島さんは解説した。
「強いやつは優雅に振る舞う。池の中でも一緒なんだな」と独り言のように部長が呟いたその時、蛇トンボの幼虫が急に加速し、上を泳ぐタイコウチの腹部に噛み付いた。
「おおおおおおおおおおおお!」と小学生たちは叫び声をあげた。部長も一緒になって叫んでいる。
「すっげえええええええええ!!」
のたうち回るタイコウチの腹部には蛇トンボの幼虫の頑丈そうな顎が食い込んでいた。メダカは慌てふためき、さっきの倍速でバケツの中を泳いでいる。まさに錯乱状態といった様子だ。この場から逃げ出そうと必死に出口を探しているようにも見える。無いことはわかっていながらも、それでも。
「誰がお友達だって?」
横から部長の低い声が聞こえた。それを聞いていた木島さんは爽やかな声で笑った。
 
 午後の練習を再開してから暫くしたところで雲行きが怪しくなり、僕らは解散することになった。楽器が雨に濡れるのだけは避けなければならない。
「なんで?今日は絶対晴れるって言ってたのに!」と珍しく動揺する部長を木島さんは宥めた。
「次の集まりはまた連絡するから!すまん!」
部長はそう声を掛けて回った。楽器を交換していた僕らもそれぞれ借りていた楽器を返却し合い、その場を離れることにした。
「もっとしたかったなぁ」と琳は残念そうに呟いてから、「そういや、そうすけバイトって夕方からだよね。さっきの店でも寄ってかない?」と僕を誘った。その瞬間、僕の心臓は硬く縮こまった。
「ごめん。ちょっと先客があって」と僕は言った。大丈夫。嘘はついていない。
「そっか。じゃあ家帰ってジョージに相手してもらおーっと」と琳は深く訊ねず、カラッと言った。再び僕が謝ると「いいよー。またラインして」と言って琳は家の方に向けて歩いていった。その様子を見送った後、ついさっきまで後ろにいた岸本を探したが、彼女は姿を消していた。若干の後ろめたさと公園に来る途中に感じた一抹の不安を思い出しながら、僕は足早に来た道を引き返した。
 

by telecasco | 2017-11-18 16:28 | 諸行無常